2009年9月11日
宇佐美 保
先の《野中広務氏と小泉純一郎氏そして差別問題》の一部を補足しようと思いましたが、全体が長くなってしまいますので、本文と次の《差別する石原慎太郎氏、される野中広務氏》の2つの拙文に分けました。
8月30日の総選挙で、自民党が大敗を喫したので、自民党政権の提灯を持ち続けてきた田原総一朗氏も、これで、自民党の提灯持ちを辞職されたろうと思い、9月6日、長らく見向きもしなかった地上波テレビ(田原氏が取り仕切るテレビ朝日の「サンデープロジェクト」)にチャンネルを合わせてみましたら、なんとスイッチを入れた瞬間に、(はっきりした文言は忘れましたが)田原氏の次の言葉が吐き出されてきました。
“今回の選挙で、民主党は大勝したが、その勝利は小沢一郎と言う選挙の名人の力によるものであり、 |
私は、びっくりして、直ぐにスイッチを切りました。
そしてその夜の朝日ニュースターの番組『日本の設計図』“民主党政権の目指すべき政治とは”(司会:早野透氏)でゲスト出演された平野貞夫氏(元参議院議員:自民党を作った人々の薫陶を受けて参院議員として2期12年間を務められた)は、次のように発言されて居られました。
“特定のテレビ芸者、男芸者と言える男が自分の意向で世の中、政治を動かそうと、 これは明治ファシズムですよ、そういうのが数人いるんですよ” |
このように(名前を上げはしませんでしたが)田原氏を断罪する平野氏は、小沢氏のブレーンでもあります。
(そして、同じ放送局の朝日ニュースター『パックインジャーナル』に時折、ゲストで出演される氏の発言を傾聴させて頂いております)
そして、平野氏は、今回の自民党の敗北を次のように解釈されておられました。
自民党崩壊のきっかけは、昭和55年ごろ、50年代に明治生まれの与野党から消える、その頃から国会議員の質が変って来た。 それ迄は、与野党共に政治を自分が行うと言う忠誠心が見えていたし、自民党の指導者達には大金持ちの人が少なかった。 彼らは、他人の世話や援助を受けつつ立ち上がってきたのであって、逆に共産党社会党の人達に大金持ちがいた。(“社会正義、人類愛を背景に”と早野氏が補足) そして、(方法は対立していたとはいえ)社会全体が良くなるにはどうしたら良いかを自民党から共産党まで同じ意識を持っていた。 このように権力運営の慎重さや責任を持っていた自民党が、談合で作られた森内閣後に劣化し始めた。 更に、今の自民党に問題なのは、400年続いてきた資本主義が崩壊過程に入ったという歴史認識が(民主党にはそれらしき意識はあるが)自民党には全くないことである。 リーマンブラザーズショックに対する自民党の対策は、重化学工業時代の経済構造への改革論であり、第3次産業革命が起こって高度情報社会が起こり文明が変わったとの認識が全くない。 |
更に、これからの民主党に対しては次のような心配も披露されておられました。
昭和30年40年50年と金脈問題だとか色々な問題を抱えながらも、国民の為には結構良い政治をして日本を繁栄させた自民党のノウハウを権力運営の良い部分を客観的に分析することなくしては民主党はよい政治が出来ない。
自民党の崩壊、130年続いてきた日本の政党政治の崩壊に続く、これからの新しい政治を築く為の重大な責任を持った民主党は、ここ10年自民党の壊れてきた本当の根っ子の部分を勉強して欲しい。
この平野氏が(名指しこそしませんでしたが)蛇蝎の如く忌み嫌う田原氏が、首相に担ぎ上げた小泉純一郎氏(拙文《真実だとしたらとても怖い話》もご参照下さい)の行為の中で、次の2点に感銘を受けておりました。
私が感銘を受けた小泉純一郎氏の2つの行為 |
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(1) |
北朝鮮へ飛び拉致問題の交渉を自ら行った事 |
(2) |
ハンセン病回復者と握手し、控訴を取りやめた事 |
しかし、野中広務氏と辛淑玉氏の対談を綴った『差別と日本人 発行所:滑p川書店 2009年6月10日初版 8月10日 6版発行』を購読して、この件に関しては裏があっとことを知り、愕然としました。
先ずは、次のような記述です。
『差別と日本人 発行所:滑p川書店 2009年8月10日 6版発行』より |
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辛 |
小泉さんの性格がよく表れていたのが、北朝鮮に行った時、向こうでお茶一杯飲まないで帰ってきたことだと思うんですね。 |
野中 |
お茶飲まない、食べない、それから泊まらない。全部日本から持っていったものを食べていたようだ。一切向こうから出されたものは食べないということで徹底しておった。 向こうは共産主義国家とはいえ、もともとは儒教の国ですよ。そういう国に行って、おまえが出したものは一切食べんぞと、こんな失礼な言い方があるかと。そこからこの訪朝は間違っている。 |
このような小泉氏の態度で、外交が可能でしょうか!?
更に驚くべき発言を野中氏は披露されておられます。
野中 |
・・・それと、このあいだ、北朝鮮問題に関して新しい情報を仕入れたんだけど、それを聞いて、日本ほど恥ずかしい国はないと思った。二〇〇二(平成十四)年に五人、そして二年後には子どもたちやジェンキンスさんらを帰国させた。これらの見返りとして、北朝鮮側はある条件を出してるんですよ。ところが、それを日本は何一つ履行していない。そのため、北朝鮮側でその時に中心になった人物がいま非常に厳しい状況に追い込まれている。 それを耳にして、小泉っていうのはひどいことしたと思った。 |
約束を守らないと言うことは、その後の拉致問題の進展、解決など小泉氏の眼中には無かった事になります。
(野中発言が真実なら、小泉氏は専ら小泉内閣支持率向上の為に、拉致被害者の方々を利用したことになります)
更に不思議な事は、小泉氏から首相の座を引き継いだ安倍晋三氏の存在です。
安倍氏は、小泉氏に同行して北朝鮮に渡っているのですから、この密約はご存知でしょう。
ところが安倍氏は北朝鮮との密約を無視し対話路線を蹴飛ばして強硬路線(少なくとも表向きは)をひた走り続けていました。
(そして、その安倍氏の成果は皆無です!
更に、安倍氏と北朝鮮となりますと、「元公安調査庁長官の緒方重威氏が、朝鮮総連中央本部の土地・建物売買で詐欺罪に問われた事件」を思い浮かべますが、この件は別文《拉致問題の暖簾を掲げる政治家達(1)》にて記述します)
それでは、次は「ハンセン病訴訟で国が控訴を断念」の件に移らせて頂きます。
ハンセン病訴訟で国が控訴を断念 |
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辛 |
ハンセン病回復者の人たちから提訴された訴訟で、小泉さんが控訴を取りやめたじゃないですか。 |
野中 |
あれは、僕が小渕内閣の官房長官の時に、回復者の人たちが熊本地裁に提訴したんですよ。 …… 僕は所用で出かけていて国会へ行こうと思ったら、官邸の前で人がたむろしているわけ。「何だ、あれ?」と秘書官に聞いたら、「ハンセン病の訴訟団が会わせてほしいと言ってるんです」と言うので、僕は「会うたらいいじゃないか」と言った。すると「いやいや、もう各省、会いませんから」って言うから、秘書官に「国会へ行くのにまだ時間あるんだろう。みんな入ってもらえ」と。それで官邸の入口の応接室で話を聞いてやったんだ。 一人ずつ挨拶して握手して、「頑張ってやれ」と言うてやったんだ。 しかし、熊本地裁で勝訴して、すぐ僕のところに来て上訴しないように頼まれたのだけど、僕のところに来たって解決しない。あんな小泉みたいな変わった奴がおるんだからね。 これは策を弄さなあかんということで、公明党の坂口力さん(小泉内閣の厚生労働大臣)に会う段取りを付けたんだ。坂口さんは非常に良心的な方だからね。そこでこう言ったんだ。 「公明党の代議士で、医者をしている福島豊というのが厚生労働を専門にやっている。彼は良心的だから、彼をこれからここへ来さすから、福島と一緒に坂口さんのとこへ行ってほしい。まず坂口さんに話をして、坂口さんから総理に意見を上げてもらおうじやないか。 そうでもしないと、反小泉の僕が関係しているのがわかったら、小泉は反対するよ」 その後、実際に国が控訴を断念してから、訴訟団の人たち、「あの時は先生に元気づけられた。先生が握手して頑張れと言うてくれたから、一審で勝つことができました」と言うてくれたんですよ。 …… |
私が大感激した小泉氏の「ハンセン病回復者の方々」に対する応対の影には、 |
では、「拉致問題に関しての日朝首脳会談など」に於ける小泉氏の演技は 私は、米国のブッシュ大統領(当時)或いは彼に近い方のシナリオでは?と推測しています。 |
と申しますのは、小泉氏の2回目の訪朝時に、曽我ひとみさんのご主人へ不可思議な説得が見事に結実したのですから。
この件に関しては、先の拙文《小泉氏首相を支持する日本人と曾我ひとみさん》の一部を以下に抜粋させて頂きます。
小泉氏は、ジェンキンスさんに対して身柄の保証が何も無いのに、日本に来るようにと説得されたとのことです。
そして、ジェンキンスさんに、“米国の対応を日本の新聞からも得ている”と反論されてしまっているのです。
(朝日新聞:5月20日には、次のように書かれています。)
……米国防総省当局者は18日、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンス氏について「極めて深刻な統一軍事裁判法違反に問われていることを日本政府にすでに伝えてある」と述べた。さらに同氏が北朝鮮に滞在中は時効期間が停止していると指摘。「国籍に関係なく訴追対象となる」との見方も示した。 一方、別の米政府高官は同日、ジェンキンス氏への対応が日米両国間の「重大な問題」になっていると述べ、あらゆる可能性について検討していることを示唆した。 恩赦などの例外的措置に対しては、特に米軍の制服組に反対意見が根強いことを踏まえ、同政府高官は「彼は重い罪に問われている」と指摘したうえで「まだ決定は下されていない」と話し、米政府が慎重に対応を検討していることを示した。 |
この様なジェンキンスさんの反論に対して、小泉氏は、外務省役人の助言で、
“「I guarantee(私が保証する)」と英語でメモを書いて手渡し、身柄の安全を約束したが、拒否の姿勢は変わらなかった” |
とのことですが、冗談ではありません。
いくら小泉氏が保証すると云ったって、相手(米国)が居ることです。
その上、小泉氏の首相の座にいる期間だった不安定です。
それに、縁起でもないことですが、いつ小泉氏が命を落とさないとも限りません。
この様な状態で、ジェンキンスさんの訪日を促すのは詐欺行為でさえあります。
平壌での1時間にわたる説得は、小泉氏の全くの政治的パフォーマンスでしかなかったはずです。
このような小泉氏の説得が成功した背景には、小泉氏の書いた英語のメモ
I guarantee(私が保証する) |
の
“I”とは、“I=私=小泉”ではなく“I=私=Bush(ブッシュ)” |
だったからではないでしょうか?
このような背景が真実か、或いは、ご存知なのかは私には分かりませんが、2006年4月には、拉致されておられる横田めぐみさんのお母様の横田早紀江さんと弟さんの拓也さんが、渡米して、ブッシュ大統領とホワイトハウスで面会し、「拉致問題への理解」を懇願されておられます。
しかし、ブッシュ氏は、表面的には「拉致問題の解決」への協力を約束はしても、実質的な行動は「小泉内閣延命手段」以外には頭の隅にも無かったと私は邪推せざるを得ません。
そして、野中氏は、米国の「拉致問題」に対する姿勢を次のように理解されておられます。
野中氏「拉致問題」に対する米国の姿勢を語る | |
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辛 | 拉致問題の解決をアメリカに頼る向きもありますが、その方法は有効だと思いますか。 |
野中 | アメリカは三十八度線から早く撤収したいんですよ。イラクで失放しアフガンでも失敗している。 だから北と南の負担を軽くしたいんですよ。これはもうアメリカの本心なんだ。 |
辛 | だから日本ほアジアの中でうまくやってくれよっていうことですよね。 |
野中 | そう。 |
では何故、日本人の政治家の力で解決しないのでしょうか?
1人だけ(或いは他にも)石原慎太郎と言う名の政治家が、
“自国の人間が拉致されたら、 米国なら、救出の為には、戦艦を北朝鮮の沿岸に差し向け、直ぐに解決するだろう” |
と何度も語っていました。
しかし、
今年3月半ば、中朝国境付近で北朝鮮側に捕らえられ、 6月に北朝鮮の裁判所から労働教化刑12年の判決を受けていたた 2人の米国人記者の救出に当たっては、戦艦を差し向けるどころか、 (数ヶ月に渡る下交渉の後?) 8月にクリントン元米大統領が、北朝鮮に飛び、 金総書記との会談で、記者2人の不法入国や反共和国(北朝鮮)敵対行為について謝罪の意を表し、 人道主義的な側面から釈放するよう求める米国政府の要請を伝達し、 2人の米国人記者が5ヶ月ぶりに釈放されたのです。 |
このような米国の対応を見れば「拉致問題の解決」には、小泉氏とも、石原氏とも異なる、真摯な交渉が必要である事が分かります。
ところが、石原慎太郎氏以外の日本の政治家達が「拉致問題」に対して、どのような働きをされておられるのでしょうか?
安倍晋三氏、小池百合子氏らに代表されるように、「自らの政治生命の延命」の為に「拉致問題」を利用しているように過ぎないと、私は邪推せざるを得ません。
(この件に関しては、別文《拉致問題の暖簾を掲げる政治家達(1)》並びに《拉致問題の暖簾を掲げる政治家達(2)》にて記述致します)
ここで、もう一度小泉氏の件に戻りますと、朝日ニュースターの『パックインジャーナル』を司会されている愛川欽也氏は常々
“小泉純一郎という人物は稀代の名優!” |
と絶賛しています。
(その上、政治家小泉には、小泉ブームの前から不信感を抱かれて(危険視されて)おられました、愛川氏は立派な洞察力の持ち主と尊敬しております。そして、引き続きのご活躍を期待しております)
それにしましても、小泉氏の顔がテレビに映るたびに、私は何故か、新井将敬氏の顔が脳裏に(否!眼前に)浮かんでくるのです。
(容貌が、どこか似通って見えるのかもしれません)
そして、対談の中に、次のような記述を目にするのです。……
この続きは次の《差別する石原慎太郎氏、される野中広務氏》に移らせて頂きます。
(補足)
今回の野中氏の対談相手の辛氏は多方面から物事を見る才能をお持ちなのに、「9.11」の犯人を「オサマ・ビンラディン」と決め込んでいる?と思わざるを得ない発言がありました。
辛氏の限界? |
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辛 |
……アメリカのあのブッシュでさえ、「9・11」の後、アメリカにいるイスラム教徒は別なんだっていう話をしたにもかかわらず、日本の場合ほ、たとえば北朝鮮関連で何らかの問題が起きたのをきっかけに在日が心無い人たちにボコボコにやられていても、決してそれに対してコメントを出さない。それと同じように、松本智津夫氏の子どもは犯罪者の子どもだということでボコボコにやられても誰も助けない。つまり、叩いてもいい相手を決めて、集団でストレスの発散をする。 |
野中 |
困った民族だ。 |
しかし、野中氏は、「オサマ・ビンラディンを犯人と決め込んでブッシュ……」との表現で、次のように発言されておられます。
しかし、野中氏は、「オサマ・ビンラディンを犯人と決め込んでブッシュ……」 |
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辛 |
私は、……一つはオバマさんが、「次はアフガニスタンだ」って言ったこと。「は?」って思ったのね。あの9・11をやった犯罪者集団を探すというのならわかるけれど、なぜそれがアフガニスタンという切り口に変わるのか。結局は、失礼な言い方だけども、イラクではなくてアフガニスタンだということによって、うまく切り抜けたんだなっていう感じがしたんですね。 |
野中 |
僕は単純に考えて、アメリカは戦争を継続してなけりゃ経済は成り立たないんだ。 軍需産業をはずしてアメリカ経済というのはもたない。だから何か理屈を設けてどっかで戦争しかけてなきゃならん。 そうすると、アフガンでのオサマ・ビンラディンを犯人と決め込んでブッシュはやってきたから、 |
辛 |
そうですね。人道支援の意味も含めてね。 |